作業日記 2018

07 Muramatsu AD 頭部管

に Yoshio Takamura が投稿

今回のご相談内容は次のようなものでした。

私自身は現在40代で,中学生の頃からムラマツAD#36***をちょうど30年使用してきました。
中学・高校の6年間は毎日のように吹いていましたが,その後社会人となってからは,月数回吹く程度で過ごしておりました。
しかしながら3年前に,社会人の演奏団体にて活動することになり,ムラマツ新宿店さんにてフルオーバーホールを実施しました。
回はパッドも新型に入れ替え再スタートしたのですが,その時期に,中音域のEの音を少々吹き込み気味にすると「裏返る」という現象に気づきました。
ムラマツさんがオーバーホール後に無料に実施くださる再調整の際に申し出てみたのですが,特に不具合の指摘はありませんでした。
まあ自分自身の近年の練習量も練習量ですので,そちらに起因するもの程度に片付けておりました。
しかし1年ほど経過して,たまたま私のADと同世代のSRを吹く機会があり,SRの頭部管とAD胴・足部管を組み合わせたところ,非常に楽に鳴ってくれるとともに音飛び時にも音程が安定する感覚を持ちました。
これ以降,頭部管の個性や不具合などについてネット上で検索しているうちに髙村様のFacebookページに出会い,時々拝見しているうちに,作業日記「2015年No.33のムラマツDN」や「2017年No.04のムラマツAD」にて言われている現象が,私のものと同じではないかと思えるようになってきました。
また,ほかのムラマツのチューンの際にもコメントされている「左手ぶら下がり」も,(アマチュアの私には正確な意味が解っておりませんが)もしかしたら私の持っている感覚と同じではないかと思ってきました。
このような経緯より,ぜひとも髙村様にチューンをお願いしたいと決意した次第です。

送っていただいた楽器を吹いてみると・・
最初に吹いた瞬間、「何か頭部管に詰めてあるのか?」と思わず中を覗いてしまいました。
それ程つまり感がひどく、速い息で吹こうとすると音がひっくり返ってしまう状態です。
この状態を「特に不具合は無い」と判断する修理担当には疑問を感じますが、頭部管に関してはどこでもほぼ同様の対応だと思います。

エッジに傷がありますが、その影響とは思えません。

当時の歌口としては最近の形に近い感じです。
大きな問題はありませんが、アンダーカットの先端(終端)やコーナー付近に粗い部分があります。
構えた時の手前右下のコーナーにハンダの残り・・形のくずれが見られます。
これらを修正すれば改善できそうです。

その前に、リッププレート側面の凹みも何とかしたくなりました。
完璧に直すには一旦歌口を外して修理することになりそうですが・・
とりあえずこのままで何とかならないか試みることにしました。

意外と柔らかかったので、押したり引いたりして殆ど目立たなくなりました。

コーナーや奥の方を滑らかにするために手を入れると、ライザー面の不具合も見えて来ました。

コーナーのハンダ残りは修正できました。
アンダーカットも綺麗に整いました。
ショルダーにも少しだけ手を入れて表面のキズも取りました。

吹いてみると、最初に感じた詰まり感は無くなりました。
とても気持ち良く吹けるようになりました。
以前吹き比べて感じられた SR の印象に近付いたのではないでしょうか。
それ以上に感じて頂けたなら、なお良いのですが・・・



06 Philipp Hammig Piccolo 頭部管

2018/05/08 7:18 に Yoshio Takamura が投稿   [ 2018/05/08 18:15 に更新しました ]

ピッコロ頭部管について

3オクターブ目のF#辺りから上の音が鳴りません。

ということで、確認させていただくことにしました。


大変綺麗な楽器です。

吹いてみると確かに高音が鳴らし難い状態でした。
低音も少しぼやける印象です。

先ず気になったのは、中のチューブの管端がやけに厚く見えた点でした。
指で触れてみると明らかにバリが出て内側に飛び出した状態です。
この部分の修正だけで改善できるか・・と期待したのですが、ある程度の変化はあったものの未だ問題は感じました。

その他の問題点も見つかりました。
エッジ付近のガタつきが気になります。

画像(鏡像)右下の角張りと形の歪みも気になります。

また接続コルクがきつめで分かりにくいのですが、中の金属管が細目でぐらつくようです。
これらを修正すれば良い状態になりそうです。

先ず中の形を修正しました。

次にエッジと表面部分もできる範囲で修正しました。

ちょうどエッジ付近に導管が干渉するので完璧に手直しはできませんでした。
歌口穴の寸法もかなり小さめでしたが、あまり手を加えずに形の修正のみに留めました。

接続管の調整は結構手間取りました。
中のチューブがかなり細く恐らくぐらつく状態だったと思います。
接続コルクは新しく張り替えてあったので、そのぐらつきを抑える為なのかかなりきつい状態でした。
保護キャップがかなりきつかったのでその様に推察できました。
しっかり鳴る状態まで中の管を広げるとかなりきつくなってしまうので、コルク側とバランスを取りながら調整しました。
何か接続の状態に癖があるようで、奥になるほどきつくなります。
音に影響の出ない範囲できつ過ぎない様に調整しましたが、最後まで入れるときつく感じます。
ピッチについては十分な抜き代があるので、通常は気にならない範囲だと思います。

当初の高音の鳴り難さは改善できたように思います。
低音も元の状態よりもしっかり鳴るようになったようです。


05 Lafin 頭部管

2018/03/30 3:04 に Yoshio Takamura が投稿   [ 2018/03/30 5:05 に更新しました ]

今回は知人からの依頼です。
アドラーの先が剥がれて引っかかるのを直すのが主な目的ですが、ついでに問題があればチューニングも・・ということでした。

先端が剥がれると布で拭いた時に繊維が引っ掛かって捲れ上がってしまう事が良くあるようです。
根本的に直すのは難しいので、気にならない様に誤魔化すしかありません。

音を出してみるとあまり良い感じではありません。
中音左手がぶら下がる傾向もありますし、ラファンにしてはまとまりのない音の印象です。

エッジにキズがありました。
よく見ると左側にもガタついた部分が見つかりました。
さらにショルダー部分にもこの様なキズがありました。

これらを手直しするだけでも現状の改善は出来そうです。
加えてアンダーカットにも少しだけ手を入れることにしました。

最初の画像と角度が違いますが、ショルダーのキズも綺麗になりました。
アドラーの先端も普通の状態に写っていますが・・
とりあえず磨いても引っ掛かることはなくなりました。

ボディーはヘインズの14K ということもあるのか、それほど力強い響きではありませんが、私の知っているラファンの音に近付きました。
音程の問題はクリアーできましたし、全体に音のまとまりが良くなった印象です。

この頭部管は中古のものをネットで購入されたそうです。
歌口中心から管端までが145㎜しかないので5㎜ほどカットされているようです。
抜き代を見るマーク位置(ライン)が管端から37㎜位なのであまり気になりませんが、実際には通常よりも抜いた状態になるようです。
普通は奥まで入れた位置でラインを引きますが、40mmが標準的な長さです。



04 SANKYO 木管頭部管

2018/03/13 5:45 に Yoshio Takamura が投稿

ヴィヴァルディの夜を吹こうとすると、最終楽章の低音域でアクセントをつけると裏返る。
また、中音域のFがとても低くなり、高音域のC,E♭,Fの音程がかなり高くなります。
問題が何もないのであれば自分の奏法のせいなのでしょうがないですが、何か問題があるならば、本番も近いのでチューニングをお願いいたします。

というご依頼でした。


確かにご説明いただいた状態を感じる事ができました。
特に中音の E、F 辺りの音が下向きになり、息の速度を上げるとひっくり返る傾向がありました。
試しに私の頭部管に差し替えてみると感じられなくなったので、頭部管が影響している様です。


作りを見ると、僅かに気になる部分はあるもののそれ程問題のある状態ではありません。
ただ少々気になる雑音はエッジにあるキズ状の部分の影響も考えられます。
アンダーカットの仕上げにわずかに問題が見られますが、大きく影響しているかどうかはわかりません。
劇的な改善は見込めないかもしれませんが、以上の修正である程度の改善は期待できるかもしれません。

まずはアンダーカット部分を手直ししました。
エッジ右付近の傷のような部分もほぼ修正できました。

当初感じた中音の下向きの音程感は改善されたと思います。
全体に音のまとまりや音色の統一感も改善された様に感じるのですが、断言できる自信はありません。
耳で感じる範囲では音程の違和感をほとんど感じなくなりました。
チューナーで確認すると傾向は現れますが、コントロールできる範囲です。
ただ C については C5 C6 共にかなり高くなる傾向があるようです。
いろいろ検証してみたのですが、これは胴体による影響のようです。

元の状態がひどく問題があれば変化が良く分かるのですが、最近は元の状態をすぐに忘れてしまうので違いに自信が持てません。
少なくとも現状では特に問題を感じないので大丈夫だとは思います。
普段吹いていらっしゃる方が一番良く分かると思いますので、あとはご本人の判断に委ねることにいたします。



03 歌口交換

2018/03/08 5:45 に Yoshio Takamura が投稿

Pearl PF665E の頭部管の歌口を木製に交換したいというご依頼です。
現在は古いムラマツの頭部管と合わせて使用されていて、ほとんど使用されていないということでした。

頭部管を送っていただく前に交換する木製歌口の準備をすることにしました。
リグナムバイタと薩摩黄楊を用意したところ黄楊を選択されました。

送られて来た頭部管を見ると、歌口穴がかなり大きく吹いた感じもあまり良い状態ではありませんでした。

寸法を計測しただけでかなり穴が大きかったので、管の穴埋めをすることを前提に進めることにしました。

ハンダ付けもライザーのロウ付けも良好な状態でした。

今までは管の穴を塞ぐのに
2 先ず このような板を切り出して適当に成形し
3 2を型として管にケガイて穴を成形
という手順でしたが、これだと3の穴が大きくなる危険がありました。
今回は
① 最初に型となる物を用意(外周)
2 ①を使って2の板にケガイて切り出し成形
3 同じく①でケガイて3の穴を成形
という手順にしました。
両方共にケガキ線に沿って正確に削ることでほぼぴったりと合わせることができました。

ロウ付け後に余分な銀ロウを削って磨くとほとんど平らになりました。
内側も削ることなく磨いただけです。

用意しておいた黄楊製リップを管に接着後、管と穴を合わせて整えました。

磨き終えてこのあとオイルを塗って終了です。

完成しました。
汚れの目立つ木なので管の磨きに気を使います。

金属と変わらぬ吹き心地で木の柔らかさも感じられます。



02 POWELL SIGNATURE 頭部管

2018/02/20 7:49 に Yoshio Takamura が投稿   [ 2018/02/20 15:55 に更新しました ]

 頭部管の内側やリッププレートに傷があり、修理を希望しております。
 非常にパワフルで良いのですが、息のコントロールが今まで使用してきた楽器と比べて少し難しく、
 また音が少し曇ったような印象を受けます。
 以前からライザーの溝のような傷等に気なっており、音に影響しているのではと思っていましたが、
 この度ホームページを拝見させていただきもしやと思いご連絡させていただきました。

というご依頼内容でした。

吹いた感じはそれ程ひどく問題があるわけではありませんが、中音の右手が詰まる感じで音程感にも問題を感じました。
全体に雑音に近い倍音を感じるのも気になりました。
つい最近調整したシグネチャーでも、倍音を乗せていくとリードの振動のような音が気になりました。

ご指摘のように外から見ても分かるキズがあります。

中を見るとなんともひどい状態です。
恐らく歌口を成形してから管に溶接していると思われるのですが、
粗いヤスリを縦に掛けただけで仕上げ工程を省いてしまった様に見えます。
前に見た同機種はこの様な状態ではなかったので、工程が抜けてしまったとしか思えません。
それとも後から手が加えられたのでしょうか?



全てを滑らかに仕上げると、当初の問題は感じられなくなりました。





01 Nagahara 木製頭部管

2018/01/30 20:56 に Yoshio Takamura が投稿

今年最初の投稿はナガハラの木製頭部管です。
材質はローズウッドのようですが、正確な種類までは特定できません。
フィリップ・ハンミッヒの胴体で使用されています。

とにかく反応の良い頭部管ですが
全体的にシャーシャー雑音が多い点と
中音右手から下の音が、グーッと詰まったような
潰したような音になりやすい点が気になっています。

息の当たるエッジに小さなカケあること
サンキョウばりの平面的なショルダーカットが
きれいに削れておらず、途中で山ができていることなどがあるので
そのあたりの修正で良くな らないかと思っています。

実際に吹いてみると、発音の傾向は悪くないのですが確かに雑音が感じられ、音程にも問題を感じました。

つくりを見て行くと
この様に穴の輪郭が崩れています。
ショルダー部分が多面体になっています。
中の形もかなり歪んでいます。
特に左の画像に見られる片方だけ大きく広がって角張った形状を完全に修復するのは不可能です。
前後の下もこのような感じです。

これらを修正していくと、途中の面の歪みが影響していることが良く分かります。
ショルダーに異なる面が出来てしまったのも、その下の壁の形状に因るものと分かりました。
面の歪が無くなるとすっきりします。
左の画像も元の状態に比べて殆ど問題を感じなくなりました。
そう見える様に誤魔化した部分もありますが・・
外の輪郭もほぼ整いました。

他にも修理痕なのか製作時の名残なのか、管の内側の接続管と木部の境目に接着剤が残っている状態でした。
以前私も使っていた接着剤と同じ物の様でした。


修正を終えて吹いてみると、当初感じた問題は感じなくなりました。
以前にもパウエルの木管に合わせた違うタイプのナガハラ頭部管を扱ったことがありますが、その時も同様に良い印象でした。






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