Post date: Feb 21, 2014 2:08:16 AM
今回は約40年前のムラマツDNに約30年前のサンキョウのRS-2頭部管を付けてご使用のお客様からのご依頼です。
私のDNは 17970 番ですが、こちらは 1679* 番ですから1000番程古い楽器です。
オフセットリング Eメカ G-Aトリル H足 という装備です。
この楽器にまつわるエピソードをメールでご連絡いただいたのですが、とても大事にされているご様子が現物を見ても伝わって来ました。
頭部管は宮本明恭先生のご紹介で三響までいらして作ってもらったそうです。
早速音を出してみると、最初の印象はそれ程悪くない感じでした。
その後自分の楽器に差し替え、頭部管もいつも吹いている物と比較すると色々と見えて来ました。
ごく小さな音で響きを掴みながら吹いている分にはそれなりの鳴りですが、もっと表現の幅を広げようと思うと途端に頭打ちになって窮屈になってしまいます。
もともと明るい音作りの様ですので、この辺を改善すれば良いと思われます。
お客様のご要望は、繊細でシャープな音色が気に入っているが、ダイナミックレンジが狭く大きな音が出しにくく、特に低音域が響かない点を改善して欲しいというものでした。
作りを見てみると、以前私が見た楽器よりはだいぶ丁寧にできています。
ただ、ハンダ付けの状態が良くないようで、ハンダ層に切れ切れにまわっていない部分がありました。
その辺から着手することにしました。
いつもは最後にエンブレムをハンダ付けするのですが、今回はライザーのハンダまわしと同時にやってしまいます。
ここで気づいたのですが、ライザーのハンダ付けに使用されているのがどうも銀スズ半田の様なのです。
変色の具合も、あぶった時の溶ける温度からもそれが窺われました。
サンキョウでは30年も前から使用していたのでしょうか?
私が前に居た会社では10年程前から使い始めたのですが、それすら変な理由から数年前に鉛ハンダに戻す様指示が出されました・・・
段階を踏んで調整したのですが、やはり通常の Tuning では思う様な状態にならず、控えめに耳を付けて確かめ、さらにもう少し耳を大きくすることで良いところに来ました。
色々と吹き比べをしながら、もっと良くなるのでは・・・という気持ちも湧いてきたのですが、お客様の気に入られた点などを考慮するとこれが良い状態ではないかと結論しました。
私のオリジナルはどちらかと言うともう少し落ち着いた感じの傾向にあるのですが、このRS2はもっと明るく軽やかで違う魅力を感じました。
元の状態に比べると、かなり吹き込んでもちゃんと応えてくれる状態になったと思います。
それから、胴体のムラマツ DN に違う頭部管を差し替えて試した際にどうも音の詰まり感が気になりました。
良く見てみると、接続の樽から胴部管にハンダ付けされている部分にバリのような物が確認できました。
超硬ヘラで当たると手応えを感じたので、そのまま押さえてならして磨いたところ、詰まり感が解消されました。
コルク栓とヘッドスクリューの間にこのようなものが入っていました。
これは BULLSEYE の FLUTE BALANCE という物だそうです。
どうやら音に厚みを増す効果があるということで装着された様ですが、良い機会なので試してみました。
確かに替えた瞬間はかなり変化を感じるのですが、それが良いのか悪いのかは判断いたしかねます。
頭部管が重くなると自然に左手に力が入り、支えがしっかりするという利点はあるかも知れません。(その分疲れますが)
この違いを好ましいと感じられる方にとっては面白いと思いますが、これで¥8,000もするのは考え物ですね。
私なら同様の物を数百円でお作りできますが・・・
翌日もう一度吹いて確認したところ、全く問題なく良い状態に感じられたので発送することにしました。
さて、気に入っていただきメインの楽器に格上げ・・となればとても嬉しいのですが・・・
コメント
☆『とうとう楽器が届き、早速、一時間ほど吹いてみました。 驚きました、こんなに変わるとは。
まず、気づいたのは、音の伸びです。 特に中・高音域で何の制約もなく響き、広がっていく感じには驚きました。
当然のことながら、ダイナミックス・レンジも拡がって、以前ならば苦労したクレッシェンドが易々とできるようになりました。
また、これは 頭部管のチューニングによるものか、それとも胴部管にまで手を入れていただいたお陰なのか判りませんが、オクターブなどの音の跳躍がいとも簡単にできるようになり ました。
それに中音域の es, e といった重くなりがちな音が軽々とコ ントロールできるようになりました。
全体として、私のDNから受けていた「鈍重」というイメージが全くなくなって いました。
私は、ヘビー仕様のDNゆえ、その鈍重さは変えられないと思い、別の楽器を買ったのに、その必要はなかったのだと思わされました。
今は、ヘビー仕様には、やはりパワフルさという長所があったのだと再認識した次第です。 ただ、低音域は思ったほど朗々とは響きませんでした。
それは、あるいはこの頭部管のもつ基本設計のせいなのか、そ れとも私が自分の好みを髙村さんに言い過ぎたせいなのかはかりません。
もしかしたら、私に今までの頭部管の吹き方がまだ残っていて、吹きすぎているのかもしれません。
吹き方をいろいろ試してみたいと思います。
何か別のフルートを入手したような気さえします。
いい思い出はたくさんあるものの、もう昔の楽器だなと思っていました。
が、こんなにいい楽器だったのだと再認識させられ、明日からのメインのフいルートがまたDNに戻ってしまいそ うです。
わずか一時間ほど吹いただけで、多くの発見がありました。
幾つかの曲を演奏してみて、うまく吹けないのは、自分の腕のせいと思いこんでいた部分が簡単に吹けて、びっくりしたときが何度かありました。
楽器・頭部管のチューニングというのは、かくもすごいものだったのですね。
驚きました。
私の使っているフルートは現在2本ですが、頭部管は6本持っていますので、近いうちにまたそれらのチューニングをお願いするかもしれません。(女房 に叱ら れるかな・・・)
本当にありがとうございました。 』
(※後日あらためて次のコメントをいただきました。)
『さて、今日もチューニングを施された頭部管・胴部管を2時間ほど鳴らしてみました。
私自身がそれらに慣れてきたのでしょうか。
益々、調子が上がってきているようで、嬉しくてなりません。
低音域についても、私の頭の向きをちょっと変え、以前よりも少々内吹きにして、猫化された頭部管の猫頭の内側に狙いを定めて息を吹き込んだところ、十分な f (フォル テ) を響かせることができました。
あとは、この吹き方に慣れるだけだと思っています。
本当にありがとうございました。
きっとまたお世話になることと思います。
そのときは、またよろしくお願いします。』
2014/02/22(No.7) 福島県 H.H. 様