09 歌口交換(複製)

Post date: Jun 12, 2018 7:03:33 AM

今回次のようなお問い合わせがありました。


頭部管のリッププレート交換について一点お伺いします。

古いムラマツの頭部管が手元にあるのですが(極端な波型、楕円形の歌口)、この頭部管のリッププレートと同じ形状、同じ歌口形状の複製を、現在使用していないサンキョウの頭部管(銀製)に付けることは可能でしょうか?

リッププレートの材質は金属(銀)でも木製でも結構ですが、この機会に木製を試して見たいと考えています。


ということでしたが、

金属による製作は出来ないこと、木でコピーを作っても良い結果は得られないかもしれない・・

といったご説明をしました。


結局あまり自信はないものの、お引き受けすることにしました。

この頭部管はかなり太目でしたが、師匠の形見の古いセルマーに入れて吹くことができました。

音色は独特で面白さも感じますが、音程の問題や表現力の乏しさを感じてしまいます。

失礼な言い方になってしまいますが、残念ながら私にはそれ程魅力的な頭部管には感じられませんでした。

付け替える頭部管はサンキョウのシルバー(925)です。

歌口は N.RS1 というものでした。

コピーするムラマツの管の穴を紙に写して、サンキョウの管に合わせてみました。

ムラマツの穴もかなり大きいのですが、更に大きいので一旦塞ぐことにします。

銀の板をロウ付けして磨くと殆ど分からない状態になりました。

管の中もまあまあの状態です。

さて、いよいよ木製歌口の製作に取り掛かります。

材質はモラド(サントスローズウッド)にしました。

下穴を開けた後にリーマーで広げていきます。

管に合わせてちょうど良い位置になるよう調整します。

ウェーブの高さが取れる径に丸めます。

半分に切ってリッププレートの輪郭を削り出しました。

ここから寸法と実物を見ながら形作っていきます。

歌口のコピーという作業は初めてですが、なんとなく嵌りました。

ほぼ出来上がりました。

穴は少し小さめに留めて管に付けた後に更に仕上げます。

初めは要所だけ押さえておけば良いと思っていたのですが、だんだん細部までこだわって再現したくなりました。

取り敢えず出来上がりました。

あとはオイルを塗布して仕上げます。

オリジナルと並べてみました。

音を出してみると・・オリジナルよりも良好に感じられたのですが、気のせいでしょうか?

コメント

☆『頭部管は仕事の都合でまだ小一時間ほどしか試せていませんが、まず形状については、極めて高い複製度だと思います。

SRの本体に接続することで、オリジナルの音色の特徴を残しつつ、より力強い鳴り・響きになりました。

何よりも独特な形状のフィット感がオリジナルと変わらず、さらに木の柔らかさが加わって、今後のメイン頭部管になりそうです。

この度は、本来のチューニングとは異なる依頼を引き受けて下さりありがとうございました。

お願いして本当に良かったです(吹き込みはこれからですが)。

2018/6/17 (#09) 東京都 A.F. 様