Post date: Apr 22, 2015 12:56:46 AM
先日生徒さんの楽器について仲介してくださった先輩から、ご自分の頭部管についてのご相談がありました。
20年以上前のムラマツの14K製頭部管ということでした。
不満に感じているのは,息の流れが窮屈に感じることと,音色が妙に現実的な点です。
状態を見ていただき,改善の見とおしをお知らせいただければ幸いです。
ということで、送られて来た頭部管は彫刻入りのものでした。
吹いてみると確かにおっしゃる通りの印象でした。
息を吹き込むと直ぐに音が返ってくるのですが、そこに何かしらの感情や思いを乗せることが難しい状態です。
この状態を『妙に現実的な音色』と表現されているような気がしました。
極端な言い方をすれば打楽器的とも表現できますが、もっと弦楽器的、あるいは声楽的な表現力が欲しいところです。
つくりを見ると内部にこの当時特有の問題が僅かに確認できました。
しかし全体的には最近の物より丁寧で綺麗な仕上がりになっています。
第一段階として気になる部分の手直しを終え確認してみました。
元の状態よりは息の入りも良くなり改善はありました。
ただ、『現実的な音』の感じは未だ残っている感じです。
最近の頭部管との設計の違いも音に現れているようです。
私の中ではスコティッシュ化によってこの問題は改善できるのではないかと感じています。
Scottish Fold Embouchure とはどのようなものか? と尋ねられると、明確にこうだとお答えするのは難しいのですが。
人によっていろいろな感じ方があるようですが、私が一番特徴として感じるのは息をいくらでも流すことができ許容量が大きくなる点です。
勿論あまり吹き込まず効率良く音にする省エネ的奏法にも対応しますし、クレッシェンドしながらヴィヴラートを深くかけていく際にも限りなく追従してくれる気がします。
・・・以上のような説明をさせていただいたところ
メールを拝見し,スコティッシュ化を希望します。
60歳を超えたころから,本番で省エネ奏法に破たんが起こる可能性を感じています(かろうじて踏みとどまっていますが)。
逆のように思えるかもしれませんが,筋肉の衰えによる“息の支え”が甘くなるのが原因だと考えております。
そうした場合,一定程度の許容量があれば,安心して音楽表現に集中できます。
・・ということでスコティッシュ化することになりました。
ほぼ狙った状態に近付ける事はできましたが、細部において気になる部分もあり何度か手を入れ直しました。
この状態で納得していただけると良いのですが。
コメント
☆『息の流れが根本的によくなって音色が明瞭になりました。
中音域については,非常にまとまった音になっています。右手の各音,とりわけEsの音色がよくなっています。
高音域には,やや上ずる感じがありますが,これは息の流れが改善されたために,
オーバーブローになっているものと思われます。
低音域では,Eから下の音で息の角度によって抵抗感が強くなると感じるときがあります。
この点は,息の向きが内向きにならないようにすると変わるように思います。
4/26(日)にFlカルテットの本番がありますので,この演奏会での使用を前提に調整してみます。
本日,14Kの頭部管をflカルテットの練習で使いました。
冷静に吹こうとしたのですが,年甲斐もなく強引な息で吹いてしまいました(苦笑)。
息が内向きになったために音の核がぼやけたのが情けなかったです。
本来の音色が得られるよう練習を重ねます。
なお,音程については,難渋することなくコントロールできました。
4月26日(日)に,チューニングしていただいた頭部管(ゴールド14K)を使った初めての本番(フルート・カルテット)がありましたので,ご報告します。
1)フォルテ
よく息が入りました。ステージでは音量が増大した手ごたえはわずかですが,
リハを聞いていたメンバーの感想は,「今までより明瞭な音色で,客席ではかなりいい感じに聞こえた」でした。
2)ピアノ
息の流れが非常にスムーズで,音程・音色ともに楽にコントロールできました。
3)総合
楽器の制約が著しく減ったので,音楽表現に集中できたことを喜んでいます。
また,少し低音の奏法を変えたので,最初期に感じた低音のEから下の音の抵抗感はなくなりました。
メンバーにステージでの印象(特にハーモニー感)を尋ねたところ,「違和感はなかった」とのことでした。
14Kの頭部管の表現力に疑問を持って,20数年間,銀の頭部管を吹いてきましたが,しばらくこの頭部管を使ってみます。』
2015/4/22 (#10) 岡山県 M.A. 様